「やっぱり……ダメだ」
そんなの、ダメだよ。
命は誰かのために犠牲にするものじゃない。
犠牲にしていいものじゃない。
美徳には、しちゃいけない。
「っ!危ない…!!」
歩道もない場所で横切った、1匹の猫。
減速することなく向かってくる車は、猫のためにブレーキをかける優しさはなかった。
咄嗟に私が飛び出してやっと、キキーッッ!と、ブレーキ音が響き渡る。
──────ドンッッ!!
「何してんだあぶねえだろッ!!………あれっ?なんだ、気のせいか…?」
笑えるよ。
命は誰かのために犠牲にしていいものじゃないって、今にも思っていたくせに。
考えるより身体が真っ先に動いた。
小さな命のために、目の前にある命を守るために、自分の身を投げる覚悟だなんて。
それでもやっぱり私は納得できそうにない。
私は、こうなると分かっていたから飛び出せたの。
浮遊感と秒針音のなか、ぐっと唇を噛んだ。



