「これでいいのか」
「…はい。ありがとうございます」
「えっ、これってあの喫茶店のシフォンケーキじゃない…?」
「ああ。急に食べたくなって我妻先生に頼んだんだ」
うそ、あそこってテイクアウトやってるの…?
私より現代をうまく生きている感じがして、なんだか解(げ)せない。
「急にだと?ほぼ毎日のように放課後ひとりで食べに来ていたと、マスターは言っていたがな」
「……先生、それは言わなくていいです」
「こんなに面白いことを隠してどうする」
「面白くないですよ」
こう見ると少し変わった親子のようにも見える。
あまり考えすぎないようにして、私は笑っておいた。
「やっぱり空は似てる……」
涼しいとは言えない帰り道。
1945年を思い出すように、私は見上げる。
この空に戦闘機が次から次へと知覧の飛行場から飛んでいって、地上にいる人間たちは願って祈るしかできない。
知覧だけじゃない。
海軍の神風だってそうだ。
祖国を守る最後の砦(とりで)は、若者の命を捨てることを選んだ日本の過去。



