ただひとりの特攻兵のためだけに。
彼は特攻兵として散っていく運命が、本来の彼の正しい時間なのだとすれば。
それを壊して、ぐちゃぐちゃにして、ここにある自分の時間まで無かったものにできるのか。
「……それでも私は、」
「ゴホッ…!!!ゴホ…ッ!」
「はやと…?……っ!!」
激しく咳込んだ隼人に、私とマッサンは目を見開く。
「はー…っ、ゴホッ!!……はっ、」
ポタリポタリと、手で押さえた口元からコンクリートに滴る血。
その真っ赤な色は、あの日、1945年で見た忘れられない色と同じだった。
「血…っ!!マッサン……!隼人が…!!」
「すぐに救急車だ!!……鳥海…、耐えてくれよ」
これが歪みの調整だっていうの……?
たとえ平行世界だったとしても、オリジナルではなかったとしても、隼人が生きていた時代は1945年。
80年以上が経った現代には、存在するはずもない人間。



