「俺の代わりに高く高く……飛んでいけ」
飛べなかった青年。
飛ぶことを諦めてしまった、青年。
かと思えば想像もしていなかった世界─未来─へと飛ばされてしまった、青年。
「どこまで行くんだろうな。もしどこかで弾けたとしても、風船のおかげで運ばれて、俺は空の気体になったんだ」
「…なにそれ」
「…だから志緒。そんな泣きそうな顔、するなよ」
いつかに私が言ったセリフだ。
隼人の瞳に映った自分は、たしかに今にも消えそうなほど小さかった。
「…ありがと、隼人」
「なあ志緒。俺もあすなろ園…行ったらダメか?」
「……え、行くって、」
そこに暮らすってこと?
確かに隼人の立場は孤児でも話が通りそうだし、そちらのほうが都合いいかもしれないけれど。
「遊びに」
「ああ…、遊びに、ね」
日に日に柔らかくなっていく。
まさか隼人がこんなことを言ってくるなんて。
この世界で君はなにを感じたんだろう。
私はあの世界でたくさんのものを見てしまったよ。
逆だね。
未来に来てしまった隼人と、過去に行ってしまった私は。



