1945年、君を迎えに行く。





「あのっ、花折さん…!」


「……なに?」


「と、鳥海くんに渡してほしいものが…あって…」


「杠さん」



振り向きもしない私に、きっとクラスメイトは肩をびくつかせた。



「手紙なら自分で渡して。じゃあね」


「え…?どうして手紙って……」



声で、言葉で伝えられるのに、どうしてわざわざ手紙なんか書くのかと腹立たしい。

遠く離れた恋人や家族と手紙でしかやり取りできない青年たちは、ほとんど検問に引っかかって届きもしないのに。


だから彼らは女学生たちにこっそり頼んで、彼女たちは帰宅するタイミングで見つからないようにポスト投函して。


そうやって想いを伝えるしかできない現実があったというのに。



「今日は理科準備室にも来なかったな」


「……ごめん。気分じゃなくて」



ここでも振り向かない私は、振り向かないんじゃなく振り向けなかったのだ。


鳥海 隼人の顔を見ることが怖くなった。

どんな顔をすればいいのか、どう見ることが正解なのか、わからなくなった。