1945年、君を迎えに行く。





『逃げろ志緒…っ!!逃げるんだ…っ』


『おねがい……、志緒だけは生きて…っ』



燃え広がる炎、下敷きになった両親。

額から血を流し、私がどんなに身体を引っ張ったところでびくともしなかった。


真っ赤に燃え上がる火は、容赦せず両親を飲み込もうとしてくる。



『やだ…、やだっ、いっしょに外に行くの…!!パパっ、ママぁ……ッ!!』



不慮の事故。

空気が乾燥した冬の日、ガスコンロのガス漏れがきっかけで家が全焼。


父は仕事がうまく行かず悩んでいたのは確かだったけれど、決して一家心中なんかじゃなかった。


むしろ最後の最後まで、お父さんは私とお母さんの両方を助けようとしていたのだ。



『パパとママのぶんもしっかり生きるんだ、志緒』



駆けつけた消防士に抱きかかえられる私。

どんどん遠ざかっていく父は、同じように下敷きになる妻をせめて手繰り寄せるようにして、娘の私に強い眼差しを送りながらそう言った。


それが脳裏にこびりついて忘れられない、両親の最期の姿────……。