ハッと顔を向けてから、後悔する。
傷ついていない、怒りすら感じていない、柔らかく笑っている鳥海を見て。
胸の奥が……ぎゅっと、詰まった。
「怪我……、どうしてここまでされるの…」
「それは容赦ない拳骨を食らったからだ」
「ちがう!あたまっ、包帯はやりすぎでしょ…!」
「ああ、これか。これは殴られて体勢を崩してしまって、ちょうど棚の角にぶつけて切れただけだ。さすがに殴ったほうも驚いていたよ」
「………ドジ」
「…ははっ。否定はしない」
もう少し。
もう少しだけ、ほんの少しでいいから。
あと少しでも………こうして隣にいたい。
「うわっ!ちょっと…!なにすんの冷たいっ」
「なんだか顔が赤くないか?そういう場合は冷やしたほうがいいぞ」
「っ…!?か、風邪引いたらどーすんの!その腫れてみっともない顔冷やすべきは鳥海でしょ!」
「お。みっともないとは言ってくれるな」
跳ねた雫は、落ちて消える。
落ちて消えて、おちて、きえて。
でもそれが「墜ちること前提」を理解していたとするなら。
果たして雫は、ここまで純粋に、きれいに跳ねるのだろうか───。



