「あなたは、どうして未来に行こうとしていたの?」
浅瀬に映し出された幻影が、揺れている。
私の直球すぎる質問に驚きもしないで、彼はそばにある石に腰掛けた。
微笑みながらちょいちょいと手招きをしてくるものだから、私もつられたように隣に腰を落とす。
ふわっ。
それまで鳥海が着ていた軍服が、私の肩に丁寧にかけられる。
「ここは暖かいほうかもしれないが、そんな薄着をしていたら風邪を引く」
「…ありがと」
照れくさい。
重さ自体は想像していたより軽かったが、表現できない確かな“重み”があった。
「俺は1度……その“未来”に行ったことがあるんだ」
「……え……?」
「10歳の頃だったか。紙で作った飛行機が屋根の上に乗ってしまったから、俺はよじ登って取ろうとしたんだ。そのとき……足を滑らせてしまって地面に落ちた」
10歳ながらにも高い場所から落ちる痛みを覚悟したはずが、なぜか痛みを感じなかった少年は。
それどころか身体はふわりと浮き、カチカチカチという秒針音を聞いたという。



