「ん?見ない子だな。きみは…」
「この子はシオちゃんです。おうちが忙しゅうて、たまにしかお手伝いに来れない子なんです」
「そうなのか。わざわざすまない」
「…いえ」
兵舎に戻って、私はヤエちゃんたちと一緒に若き青年たちの身の回りのお世話を手伝った。
洗っておいて欲しい服、出しておいて欲しい手紙などを受け取って、彼らが怪我をしていれば応急措置程度に手当てをする。
ヨードチンキ。
それだけはちゃんと覚えていた。
………ただ、暗い。
豆電球しかない兵舎内だからではなく、空気感が威圧だと勘違いしてしまうほど、とてつもなく重いのだ。
「失礼っ!本日から第44部隊所属となった風間 当っ、お世話になります!」
そんな重苦しい空気を引き裂くかのように、ひとつの声が兵舎を照らした。
全員の視線が入り口に注目するなか、ひとりの青年は背筋を伸ばしてピシッと敬礼している。
荷物はそこまでなく、身軽そうな姿だった。
「…おなじく鳥海 隼人だ。よろしく」
そのうしろ、もうひとり。
頬に湿布が当てられて、あたまを包帯で巻かれている存在を目にし、私は思わず駆け寄っていた。



