「俺は迷惑なんかしてない。俺が志緒と話したいから話しているだけだ」
「っ、鳥海くんはっ、花折さんことが好き…なの……?」
「…志緒は俺が唯一、心を許せる相手でもある。それに俺と志緒は友達だ。嫌いなわけないだろ」
「……っ」
杠さんにとって、隼人が正直に言ってしまうことは完全に不正解だった。
最初から私のことだけを敵視していた彼女は、まるで隼人の言葉に背中を押されたように躊躇いなく近づいてくる。
私に、近づいてくる。
────ドンッッ!!
「っ!おい…!」
勢いよく突き飛ばされて、階段から足を踏み外した私自身は。
こうなるんじゃないかと予想していたのか、案外落ち着いていたことにびっくりだ。
背中から落ちるように身体が浮いて、見下ろす隼人の焦った顔になぜか笑いそうになってしまい。
「大丈夫」と、私は落下しながらも微笑んだ。
「きゃっ…!!」
─────カチカチカチカチカチ。
まばゆい光を受けた杠さんの悲鳴が立った瞬間、私だけに聞こえるだろう秒針音。
来た……、このときを待っていた。
待ちぼうけていたよ。
現世が閉じていく隙間、眉をひそめて動揺している隼人へと、私は覚悟を決めた眼差しでうなずく。
「……行ってくる」
逢いに行ってくるよ。
1945年を生きる、もうひとりの────君に。



