「隼人は何か知らない?このサイコロと一緒に現代に来たんでしょ?」
「あいにく俺はそれを使ったことがない。ここに飛ばされて初めて目にしたくらいだ」
「…じゃあ持ち主はやっぱり、オリジナル鳥海ってことか」
隼人自身はこのサイコロで時空移動したことはないらしい。
この時代に飛ばされたとき気づけば握っていただけで、私が体験したようなものは知らないと。
なので私は再びポケットにしまい込んだ。
「おい、花折」
ここでようやく、顕微鏡から目を離してまでも私を見てきたマッサン。
「…それを利用して過去に行くと言っていたが、やめたほうがいいぞ」
「え、なんで?」
あっけらかんと放つ私に、ため息交じりかと思えば真剣な面持ちで静かに続けられる。
「時代も時代だ。楽しいことは少ないだろうな」
わかってるよ。
いつ敵の攻撃を受けるか分からないし、楽しいことなんかない。
あるとするなら思ってもみないタイミングで渡された黒糖飴とか。
それくらいだ。
あの時代の“ひととき”とは、それくらいなんだ。



