君への想いは、愛だった


そんな気まずい空気を打ち切るかのように、私は言った。

「今日、あんまり寝れなかったんだよね。ちょっと寝ようかな」
「ご自由にどうぞー」
「棒読みやめてよ」
「ははっ」

棒読みで言われて、軽く腕を叩く。すると彼にしては珍しく声を出して笑った。
寝ようと思って目を閉じたけど、結局一睡もできなかった。

◼︎ ◼︎ ◼︎ ◼︎

「はー、はー」
「疲れた……」

駅から歩き出した私たちは、スマホのナビアプリが指す方向にひたすら従い歩いた。
でもどういうわけか、アプリはひたすらに遠回りで上り坂がきつい道ばかり選ぶ。
体力のある方だと思っていたけれど、流石にきつい。キツすぎる…。
なんとか滝が見えるところに辿り着いた頃には、もう2人して肩で息をしていた。

「あっ」

前見た穏やかな海とはまた違い、自然の中にあるダイナミックな滝に目を奪われた。

「めっちゃきれー!わぁーー!!」

子供みたいにはしゃぎながら滝を連写すると、後ろから呆れた声が聞こえた。

「撮りすぎ」

そういう碧は、一枚だけ写真を撮って回れ右をした。

「はい、帰るよ」

「待って、あっけなさすぎっ。もっと堪能しようよ」

「この調子だと帰るの遅くなりそう」

名残惜しくも滝を後にする。
碧の背中を見て、ふと思った。

碧はいつも、なにを考えているのだろうか。
私はクラスのみんなより彼のことを知ってはいる。

でも、きっと私が知ってる彼のことは、碧という存在の本当に一部だけなんだろうなと、ぼんやりと分かっていた。

人のことをもっと知りたいだなんて思ったことは、初めてだった。