心にいつも、君がいる


「多分毎日その人のことを考えちゃうと思う」

想像してみると、本当に私はそう考えると思った。

「でも、その人が、私のためにいなくなったんだとしたら、また違うかも」
「どう違う?」
「私がその人を変えた、私のせいだって思って、自己嫌悪すると思う。きっとその人は私のことを思っていたのかもしれないけど、私は余計悲しむからやめてって思う。それは、やだな」
「へー」
「ほんっと興味なさそう」

ついつい語ってしまった。言ったことを頭の中で繰り返してみたら、なんで急に自分のために人がいなくなるなんてこと考えちゃったんだろうと恥ずかしくなってきた。誰もそんなに私のことなんて大事じゃないのに。

「今日、寝れなかったんだよね。ちょっと寝ようかな」
「ご自由にどうぞ」
「棒読みやめなさい」
「ははっ」
棒読みで言われて、軽く腕を叩く。すると彼にしては珍しく声を出して笑った。
寝ようと思って目を閉じたけど、結局一睡もできなかった。

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「はー、はー」
「疲れた…」

駅から歩き出した私たちは、スマホのナビアプリが指す方向にひたすら従い歩いた。
でもどういうわけか、アプリはひたすらに遠回りで上り坂がきつい道ばかり選ぶ。
体力のある方だと思っていたけれど、流石にきつい。キツすぎる…。
なんとか滝が見えるところに辿り着いた頃には、もう2人して肩で息をしていた。

「あっ」

前見た穏やかな海とはまた違い、自然の中にあるダイナミックな滝に目を奪われた。

「めっちゃきれー!わぁーー!!」

子供みたいにはしゃぎながら滝を連写すると、後ろから呆れた声が聞こえた。

「撮りすぎ」

そういう碧は、一枚だけ写真を撮って回れ右をした。

「はい、帰るよ」

「待って、あっけなさすぎっ。もっと堪能しようよ」

「この調子だと帰るの遅くなりそう」

名残惜しくも滝を後にする。
碧の背中を見て、ふと思った。

碧はいつも、なにを考えているのだろうか。
私はクラスのみんなより彼のことを知ってはいる。

でも、きっと私が知ってる彼のことは、碧という存在の本当に一部だけなんだろうなと、ぼんやりと分かっていた。

人のことをもっと知りたいだなんて思ったことは、初めてだった。