次の休日。また碧に強引に約束を取り付けられて、駅へと向かう。
前に海に行った時、堂々と遅刻してきた碧のことを思い出すと、ため息が溢れた。
まだまだ暑い日々が続く毎日。こんな中待たされたら、熱中症になる…。そういうこともよく考えてほしい。
でも、前回で学んだのかもしれない。
待ち合わせ場所の改札口に、だるそうに立っている碧がいた。
「千瀬」
「おっ、おはよう」
碧に名前を呼ばれたのは初めてで、不覚にも一瞬ドキッとしてしまった。
「今日は来たんだね?」
「来た」
今日は滝を見に行く約束だ。また電車を乗り継いで、駅からも歩くと見える、綺麗な滝。
ここら辺で一番綺麗だと言われている滝だ。
もう一度出掛けると言ったら、また両親はいい顔をしなかったけど、行ってらっしゃいと見送ってくれた。意味のないところで両親はたまに過保護だ。
今回は電車に乗っている時間が長いので、私は暇つぶしとして本を持ってきた。
鞄から本を取り出すと、興味津々で碧が私の手から本を抜き取って読み始めた。
「ちょっと、返してよ」
「実は速読が得意だから、すぐに返すよ」
どうだか。あんなに分厚い本をすぐに読み切れるとは思わない。またため息をついて、もう一つの本を読み始めた。
少しして、私の鞄の中に本が突っ込まれた。
「読んだ、ありがとう」
「え、速いね。っていうか、勝手に突っ込まないでもらっても?折れるじゃん」
本当にすぐに読み切ったようだ。
「主人公の大切な人、どっかに行って離れ離れになったな」
「そうだね。連絡は取れると思うけど、やっぱり会いたいだろうね」
連絡は取れる。電話だってできる。
でもきっと私だったら会いたくなってしまうだろう。
だからと言って簡単に会いに行けるような距離ではない。
「どう、千瀬は?」
「どうって?」
「大切な人がどこかに行って、離れ離れになったらどう思うの?」
「どうって、そりゃ悲しいでしょ。会いたくなるでしょ」
急に話を振ってきた碧に訝しげな視線を送りながらも自分だったらどうなるかと考えてみた。



