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約束の時間に、駅で待って、早10分。
碧が5分も遅刻している。時間指定してきたのは向こうなのに遅刻するなんて…。
「ごめん、遅れた」
「うん、遅刻だね」
「ごめんごめん」
こういう時に、言い訳を並べない人には初めて会った。
海を見に行くと言った時、親はあまりいい顔をしなかった。
でも、文化祭で提示する絵のためだ、友達もいると言うと渋々許可を出してくれた。
両親を説得させるのは骨が折れたけど、海を見に行く許可が下りて本当に良かった。海の綺麗な風景の写真を撮り、写真を参考にしながら絵が描けたらと思ったけど、ついでに絶景を見て楽しむこともできたらいいなと思った。
改札を通り抜けて、電車に乗る。何度か乗り継ぐと、窓の外にだんだん大きく、近くなってくる海が見えた。
「めっちゃ綺麗〜!!」
「…」
「ほらほら、見て見て、めっちゃ綺麗っ!」
どこまでも続く海が、太陽光を反射してきらきらと輝いている。砂浜で遊ぶ幼稚園児に、浮き輪に乗って楽しむ外国人観光客が見えた。みんな楽しそうだ。これまたどこまでも続く青い空が澄んでいる。はっと息を呑むような光景が、目の前に広がっている。
「ほら、碧っ…あれ」
隣の座席を見ると、いつの間にか寝息を立てて碧が寝入っていた。もしかしたら今日、あまり寝れなかったのかもしれない。私だったら、こういう遠出する前日は全然寝れない。もしかしたら碧もそうなのかもしれない。寝顔も少しの隙もないほど整っている。うーん…羨ましいほど綺麗だ。
海より綺麗だなんてことは言ってあげないけど、そこらの男子よりイケメンだと思った。
「〇〇駅ー、〇〇駅でーす」
「ほ、ほら碧、起きて」
寝ているところを起こすのは少し気が引けたけど、降り過ごすわけにはいかないから起こした。
「…あれ」
「寝てたよ。後ちょっとで着くから、降りる準備して」
「あー」
まだ眠そうだけど、理解したのかのそのそ準備し始めていた。
電車が停まって、私は後ろの碧に注意した。
「落ちないでね」
「いちいち言わなくていい」
電車とホームとの隙間に落ちないように言ったら、怒ったように返された。流石に子供扱いしすぎだったか…と反省する。
「わーーーーー‼︎めっっちゃきれーい‼︎」
「…そうだな、お前がそんなはしゃいでんの初めて見たな」
「学校でははしゃぐ理由がないし」
「で、いい景色の写真、撮れそうか?」
「撮れそうじゃない?碧は?」
振ってみると、少し考え込んで答えた。
「撮れそうじゃない?」
私と同じ返答をしてきた。
「ま、一回撮ってみよう!」
「待てっ」
砂浜を走り抜けて、波打ち際へ行く。
興奮した表情でスマホを構え、いい場所を探していると、隣で同じようにスマホを構えた碧がやってきた。



