心にいつも、君がいる


「俺もまだ。というか、名字で呼ばないでくんない?」

「あ…ご、ごめん…」

もしかしたら苗字が嫌いとかかもしれない。素直に謝った。

「まだ決まってないなら、一緒に書きたい景色を探しに行かない?」

気付いたらそう口走っていた。横目で清水…えっと、(あお)がこっちを見てきたけど、一番驚いたのは間違いなく私だ。

どうしてこんな風に言ってしまったんだ。でも、今更取り消せない。


「……いいけど」

ちょっと戸惑ったような口調だったけど、了承をもらえてほっとする。

うーん、でも誘った手前、どこに行って綺麗な景色を探すか決めないとなぁ…。
あっ。

「じゃあ、山に行こうよ!綺麗な景色が見れそう!」

「他には?」

「うーん、海とかー、滝とかー」

「マジかよ、めっちゃ遠いとこにしかないのばっかり挙げるじゃん」

「まあいいじゃんっ。出掛けようよ!」

…って、私はいいって言っていたとはいえ、人嫌いなのに誘うのは良くなかったかも…少し申し訳なくなった。

「…まあ、いいけど」

「え…ほ、ほんと?」

「あと、どうせなら今挙げた全部に行こう」

「うん、いいよ…って待って!めっちゃ交通費とかかかるじゃんっ⁉︎」

「今いいって言ったよね。じゃあ決まり。まずは海に行こう。今度の土曜日に、駅集合。午前九時ね」

「え、待って待って、話急展開すぎてついてけないっ」

さっさと教室から出ようとする碧の横に並ぶ。でも、もう海に行くのは決定してしまったらしい。

「泳がないからね。あくまで綺麗な景色を撮るため」

「し、知ってるし」

泳ぐのは結構好きだったので、一瞬泳ぎたいなと思ってしまったけど、そんな思考を頭から追い出しながらそう答えた。


「じゃあ、土曜日ね」

「う、うん…」

手を振りながら、その背中を見送った。