君への想いは、愛だった


「お、おはよう……水瀬さんっ」
「えっ?」

教室の椅子に座って窓の外を眺めていたら、急にクラスメイトに話しかけられた。
目を見開いて瞬きをした後、恐る恐る挨拶を返した。

「……お、おはよう……」

すると彼女はぱあっと明るく笑い、手を振って自分の席に戻って行った。
私の記憶を見た人たちが考え方を変えてから、クラスメイトの私に対する態度も変わってきた。

AIはほとんど人間と同じで、恐れるほどのものでもない。そう思ったのか、みんな私に気軽に話しかけてくれるようになった。
もちろん、あまりコミュニケーション能力のない私は返事をするのが少し遅くなってしまうけど。

考え方を変えたと言っても、それはただの同情なのではないかと思ってしまう。
大切な人を失って悲しむ私の気持ちを知り、可哀想だと思ったから解放したのではないか。
もちろん、同情だとしても解放されたのは嬉しいことだ。
でも、いつか同情とか全く関係なく、AIと人間が笑い合える世界が来てほしい。

立ち上がって隣の教室を覗くと、ペンダントをつけていない部長が、人間に囲まれて楽しく喋っていた。
よかった……部長も解放されて。
部長は元々フレンドリーなので、きっと友達もすぐにできるだろう。
部長が私に気づいて、わざわざ話を中断してこちらにやってきた。

「ありがとね。水瀬さんが頑張ってくれたから、俺だけじゃなくて、たくさんのAIが救われたよ」
「ど、どういたしまして……でも、1番頑張ったのは、私じゃなくて碧です」

碧の名前を出すと、やっぱり胸が痛む。
部長も「碧か」と言って何か考え込んでしまった。
碧が消えてしまって、今美術部は私たち2人だけになってしまった。
けれど、AIに対する偏見を覆すことができたから、来年の新入生が何人か入ってくれると信じている。

「でも、水瀬さんも頑張ったでしょ。碧を救ってくれたんだから」
「わ、私は何も……」
「水瀬さん的には何もしてなくても、碧的には希望の光みたいな人だったんだよ」

私が、碧にとっての希望の光。
そんな大それたものではないけれど、少しでも救いになっていたなら嬉しい。

「そ、そうかな……」
「うん、そうだよ。碧の大親友が言うんだからそうだって」

朗らかな笑顔を向けられると、本当にそんな気がしてきた。

碧は、私のことが大切だと言ってくれた。
でも、私は碧に言葉をもらってばかりで、何も返せなかった。
そんな私なのに、希望の光なんて、大袈裟な気がする。

「俺たちが解放されたのは、水瀬さんたちのお陰だよ。2人は英雄だね」
「え、英雄って……」

私は大したことしていないけれど、碧はヒーローだと思う。

命まで賭けてくれた。