連れてこられたのは、大きな機械のある部屋だった。見上げるほど大きく、小さな部品がたくさんある。そして、人が入れそうなスペースがあった。
「これは……?」
「千瀬ちゃんにお願いがあるんだ」
「な、なんですか……?」
改まった言い方に身構えながらも次の言葉を待つ。
「この機械の中に入って欲しい」
「えっ……⁉︎」
いかにも怪しげなこの機械に……?
「だ、大丈夫なんですか……?」
「うん、大丈夫だよ。それで、この機械の中で千瀬ちゃんには碧くんと出会ってから今までのことを思い出して欲しい。できればその時の気持ちもよろしく」
「はい……?それはまたどうして……?」
「いいからいいから」
どことなく強引な先生に言われ、渋々機械の中に入った。
「これでいいんですか?」
「うん、いいよ。あ、あと……」
先生に言われるがままヘルメットをつけたりなんなりした後、私はゆっくりと碧との日々を思い出した。
碧が人間嫌いだと言ってきたこと、絵を描くための写真を撮りに行ったこと、部長がいなくなって2人で悲しんだこと、碧が私がAIだということを教えてくれたこと、海の底に沈もうとした私を救ってくれたこと、碧が消えてしまうと知って泣いたこと…。一つ一つの出来事と思いを鮮明に思い出した。
君が壊されると知った時、君を壊そうとしているこの世界と、人間たちを心から恨んだ。
君はAIだから心がないと言っていたけれど、今ならあると断言できる。
ねえ、碧。君は今、どこにいますか。
いつか私は君に会うことができますか?……ううん、できるよね。
もし会うことができたら、面と向かって言えなかった君への思いを言いたい。
私のことを救ってくれた、君のことが好きだと。
私はゆっくりと瞳を開き、ヘルメット越しに先生を見た。
先生はこの大きな機械に繋がっているパソコンを一瞥してから満面の笑みで何度も頷いて、ヘルメットを取るジェスチャーをした。
ヘルメットを取って、先生に聞いた。
「先生、これって……?」
「君たちの約束を守るのを手伝いたくて、前から作ってきた機械だよ」
どういうこと……?私たちの約束って、まさかAIと人間を平等にする、っていう約束……?
「一回入ってみて」
今度はヘルメットをつけずに機械へ入っていく。先生がパソコンのボタンを押した瞬間、目の前に見たことのある光景が広がっていた。
ここは……教室……?
先程私が思い出した記憶と全く一緒の出来事が目の前で起こっていく。私がその時感じた思いと共に。
全ての記憶が終わった後に機械から出ると、先生が笑った。
「千瀬ちゃんのこの記憶を見てもらったら、AIは感情がないとか世界征服するとか偏見を覆せるかなって。普通の人間とほとんど一緒なんだってことを世界に教えてあげたかったんだ」
そういうことか……!
「先生、ありがとうございます……私達のために、ここまでしてくださって…」
「当たり前だよ。だって僕にしては君たちはもう家族なんだから」
——ドンッ
優しい笑顔を浮かべた先生の奥の扉から、すごい音が聞こえてきた。
「石田研究者っ、少しでもいいのでインタビューを‼︎」
「ちょっと、入らないでくださいっ‼︎」
「AIは本当に無事に消えたのですか⁉︎」
「今回消えたAIが助けたAIは閉じ込めないんですよね⁉︎そのAIが悪さをしたらどうするおつもりですか⁉︎」
「感情のない人工物を閉じ込めないなんて……‼︎」



