「でも、そのペンダントはつけなくていいの……?」
そう言って碧が持っている、先程まで私がつけていたペンダントを指さす。
「いいんだよ。このペンダントが要らないような、平等な世の中にしてくれるんだろう?それに、これをつけていると俺が救ったのにまたAIだと思われて千瀬が閉じ込められてしまうかもしれないし。それつけてて欲しいし」
最後の方は碧の願望な気がするけれど、私もこのペンダントをつけていたい。
「……うん。そうだったね。安心して。碧がびっくりするくらい、平等な世の中にするよ」
そんな世の中になるのなら、碧が生きている時にそうなって欲しかった。そんな思いを、慌てて飲み込む。
「期待してる」
少し悪戯っぽい瞳で笑った碧が、もう一度先生に呼ばれて後ろを振り向いた。
「……そろそろなんだね……」
「うん。またね」
「またね」
もう一度言い合って、碧が扉の後ろに消えていく。
扉が閉まり切る時に、碧の小さな声を、私の耳が拾った。
「千瀬が好きだった」
その言葉が耳に届いた瞬間に、止まりかけていた涙がまた溢れ出した。
ずるいよ、碧。私だって、碧に言いたかった。
「私も好きだよ……」
碧は過去形で、私は現在進行形。
碧はもうすぐ、この世界から消え去る。
なのに、私はそんな碧に守られて生きていく。
碧は、私に何度も救われてきたから、今度は私を救いたいと言った。
それは、私も一緒だよ。
私も、碧を守りたかった。
1人部屋に取り残された私は、声を押し殺して泣いた。
◼︎◼︎ ◼︎◼︎
暫くして、奥の扉が開いた。
淡い期待を持ちながら顔を上げると、先生がいた。
先生は私の泣きすぎて赤くなった瞳を見ると、寂しそうに宙を仰いだ。
スマホの電源を入れて速報を見ると、淡々と碧が壊されたことが書いてあった。
碧は本当に、私を救って消えていったのだ。
部屋の中は電気は付いていないものの、窓から日光が入ってきている。だというのに、私の視界では光のない、真っ暗な世界に見える。
そう思った瞬間に、そんな考えを払拭する。
私は、碧と約束したんだ。
碧が、大切な人を守るのを許すって。
私が、AIと人間が平等に過ごせる世の中にするって。
そして、碧はきっと私がこうやって泣いて、いつまでも過去に縋り付いているのは望んでいない。私の自由を守って消えていった碧の思いも背負って、私は生きていくのだ。
できる限り早く、碧の願い……平等に過ごせる世の中にしてほしいという思いを叶えたい。でも……どうすれば世間の考え方を覆すことがでいるのか、私には見当もつかない……。
「千瀬ちゃん、ちょっといい?」
「え……?」
先生が急に手招きしてきた。訝しげに思いながらも先生の後をついていく。



