君への想いは、愛だった


“楽しかった”と過去形で語る碧に、いちいち胸が締め付けられる。

本当は、碧ともっともっと楽しい思い出を増やしていきたかった。でももう2人でやった楽しかったことの更新も、今日が最後になる。
その残酷な現実が、非力な私たちの動きを無理矢理縛り上げる。

私たちがどれだけこうなって欲しいと望んでも、願っても、残酷なこの世界は私たちの手の中にない。私たちの思い通りに物事は進まない。命を賭けて守りたいものがあっても、もう遅いことだってある。
あれもこれもなんて、無理なんだ。
でも限られた時間の中で、動きの中で、その時間を最大限に楽しめるかが私は重要だと思う。
ずーっと泣いて大切な人と話せる時間が短くなるより、たくさん話して、笑って過ごす方がいい。私はそう思ったのだ。

それから30分間、碧と時間を過ごした。
他愛もない話に花を咲かせながら、たくさん笑って、話して…残された時間を楽しく過ごせた。
最後の方では、私は泣き始めてしまったけれど、でも終始穏やかな気持ちで過ごすことができた。

「碧くーん?」
「先生……」

奥の扉から顔を出した石田先生の表情が、もう時間はない、お別れの時だということを物語っている。
碧が立ち上がって、扉の前に立った。私はその前に立つ。

碧はこれから、壊される。私を守って。

「碧……」

また、もう二度と会えなくなるという実感が込み上げてきて、その込み上げてきたものがそのまま瞳から一粒零れ落ちた。

「またね」

「うん、またね」

もう会えることなんてないのに、お互いに自然とそう言い合っていた。

また会いたい。2人の切実な想いだった。


「そうだ、これ」

碧が急に私の首にかかっていたペンダントを取って、ポケットから大事に取り出したものを代わりにかけた。

それは、私の誕生石のエメラルドのペンダントだった。

透明な石がエメラルドの周りを囲っていて、きらきら輝いていて、とても綺麗だった。
そして、極めつきはそのエメラルドの形だった。


ハート型のエメラルドだったのだ。


このペンダントが何を意味しているかなんて、聞かなくてもわかった。自然とまた涙が流れた。

「……すごく、綺麗だね……。ありがとう」

あのAIだということを示すペンダントももちろん素敵だったけれど、碧の気持ちまで込められたこのペンダントは、つけているだけでなんだか幸せだった。