嘘……。
私が閉じ込められたとしても、碧も同じようになっていて、この世にいるというだけで私も頑張れそうだったのに……っ。
碧、私のために、そんなことしないで。
『AIにも“大切”という概念があったことに周囲は驚きを隠せていない。そんな感情があったなんて、石田研究者の作るロボットは相変わらず高性能で……』
——グシャッ
「うるさい……っ」
新聞を握って、ぐしゃぐしゃにする。
高性能とか言わないで。私たちにとってはこれが当たり前だ。人間が言っている感情も全て理解できる。
低脳だとしても、これが私たちの世界なのだ。
碧が命懸けで言った言葉に対して、「大切とか思うんだ」なんて、貶しているとしか思えない。碧は、きっと全てがなくなってもいい覚悟で言ったというのに。
碧、君は今何をしているの?
私は、やっぱり君の声を聞きたいよ。
その思いに突き動かされて、スマホを手に取って碧に電話をかけ始めた。
メッセージが返って来る時間が惜しい。碧がメッセージを見る時間が惜しい。
——プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル……
どれだけ経っても碧は電話に出てくれない。
電話に出るのを待ちながら、私は泣いていた。
私は君の気持ちが痛いほどわかるよ。私も、命を賭けて君を守りたい。ただ、きっと本当に行動に移すほど、行動力もないし勇気もない。
それをしてみせた君が凄く眩しく見えるよ。
でも、私のために死なないでほしい。私のためだけに、自分のこれからの人生を諦めないで。
『ただいま、電話に出ることが、できません……』
機械の声を聞き流しながら、脱力した。
今、碧は政府の人々と話し合っているのだろうか。
留守番電話に切り替わった瞬間、私は泣きながら話し始めた。
この声が、この言葉が、碧に、碧の心に届くことを願って。
「ねえ、碧。私は、碧に死んでほしくないよ。私のために、これからの人生を手放さなくていい……っ」
最後の方は、涙で言葉にならなかったけれど、辿々しく言葉を紡いでいく。
「碧っ……。私、辛くても碧も一緒にこの世界で頑張ってくれてるって思うだけで、頑張れる気がした……。なのに、碧が、碧がいなくなったら……、私っ……」
溢れる涙が…言いたいことは沢山あるのに、何を言えばいいのかわからなくしていく。
だんだん、私が何を言っているのかもわからなくなってきた。
でも、今の私が言える最大限のことを言うよ。
「ねえ碧、ずっと、ずっと……、私と一緒にいて……?」
今のこの世の中では、叶うはずもない言葉を口にした。



