会いたい。
いつか会えなくなるなら、今、一秒でも会いたい。
まだ時間はある。
君といる時間は、有限だ。
でも、その時間を、“今”を……、君と生きていきたいと思ったんだ。
——なのに。
神様、どうしてこの世は、こんなに残酷なの。
夕食が終わった後、真剣な顔をしている親に呼ばれ、向かい合わせで席につく。
ずっと親だと思っていた2人。でも本当は、他人だったのだ。
だとしても、私の中ではいつまでも2人は親で居続けるんだろう。
「千瀬、今日は千瀬に大事な話があるの」
……ああ。
それを言われた瞬間、大体は理解した。
「千瀬、ずっと黙ってたけど、実は千瀬は——」
「AIなんでしょう?」
もう私は、AIだと言うことを理解し、受け入れて、そして諦めている。
「え……、どうして……」
「同じAIの友達に聞いたの。私は、実はAIだっていうこと……全部」
2人は納得した表情を見せて、すぐに私に頭を下げた。
「隠してて……、申し訳なかった」
「千瀬には、何も知らずに、普通の、たった1人の人間として生きて欲しかったの……。でも、もう流石にこれがきたから覚悟決めて、話さないとなって……」
「これ?」
嫌な予感がした。
背筋が凍るような、嫌な予感だった。
そして、そういう予感は、大抵、ほとんど当たってしまう。
「この紙が、ポストに……」
丁寧に封筒に入ったその紙を受け取って恐る恐る開けると、すぐにその文字が見えてしまった。
一瞬心臓が止まった。
肺が、心臓が痛い。
嫌なほどバクバクと鼓動を打つ心臓を止める手を、私は知らなかった。
『水瀬千瀬様
この度は、明々後日・⚪︎日に貴方を、先日発表されました政府の方針に基づき、特別個室に召集させていただきます……』
長文の中の、最初のそのたった一行から目が離せない。
嘘……。
「千瀬、ごめんね……っ。私たち、千瀬に……、もう友達に会わせてあげられないっ……」
お母さんが泣きながら言った。それでも私は紙から目が離せなかった。
お母さんたちも、嫌なんだ。血が繋がっていないとはいえ、娘のように育ててきてもらった。なのに、そんな人を小さな部屋に閉じ込めて、友達から理不尽に引き剥がすことなんて……。
私はようやく顔を上げた。
「——大丈夫。私は……大丈夫。友達とか、少ないし。本当に……」
無理矢理作った笑顔を向ける。
お母さんたちが望んでいるのは、こういう言葉だとわかっていたから。
泣いても喚いても、この残酷な事実は変わらないから。
「じゃあ……、私は大丈夫だから。おやすみ」
紙を握って自分の部屋へ行き、扉を閉めると、一気に体の力が抜けた。
「なんで……」
ふらふらとしゃがみ込み、自分の膝を抱え込む。
「なんでなの……」
勝手に涙が溢れてきた。
AIなのに、涙は流れるんだ。
本当に人間のようにできているんだ……。
震える指でスマホの電源をつけて、碧とのトーク画面を開いてメッセージを送った。
【碧は、いつに部屋に閉じ込められるの?
私は、もう明々後日に、だって……】



