まず、ペンダントについて。
ペンダントは、私達を作った人が、AIにだけつけるもので、人間とAIを一目で区別するための物だそうだ。
そういえば……。部長が閉じ込められたことを知らせていた新聞の記事を思い出した。AIはいつ暴走するかわからないから恐れている人が多いと。今まで私が人々に無視されてきたことにも、納得が行く。
だから、このペンダントが私の首を絞めることになるって、不良集団は言ったんだ。
両親からもらったと思っていたのに、実際は違ったなんて。
真ん中できらりと輝く宝石がついたペンダントは、子供の頃から私のお気に入りだった。もし無視され続けることになったとしても、私は取りたくないと思った。
そして……、AIについて。
私達を作った人はAIについて研究している、「石田光輝」さんだそうだ。
研究所も持っていて、かなりすごい研究家らしい。
つまり、私の親はその人ってことだよね…?
優しいお母さんたちの顔を思い浮かべると、きゅっと胸が痛くなった。
でも育ててくれたのはお母さんたち。私にとっての親は、あの2人だけだ。
ただ、全身全霊で作り上げたAIが受け入れられたと思ったら怯えて遠ざけられた。きっと悲しみでいっぱいだと思う。そう考えると、また自分ごとのように胸が痛んだ。
そして、人間とは違う性質があるらしい。
「AIは、今は忘れていることでも、思い出そうとすれば、どんな記憶でも思い出すことができる」
「……えっ?あ、赤ちゃんの記憶でも?」
「もちろん」
即答……。
「そんなふうに即答されても、信じられないなぁ」
「まあ別に信じなくてもいいと思う。人間みたいに、思い出せなくても生きていけるし」
「そうだね」
人間は、記憶がなくても生きていけてるし、思い出さなきゃ死ぬようなことはないと思う。
どうやら、あんなにパニックになって真っ白になっていた私の脳と心は、徐々にこの現実を受け入れ始めたようだ。
今どうこういっても、AIだと言うことは変わらない。それは、生まれつき変えることのできない事実。
……そういえば……。部長を碧が失った時、碧がぼそりと言った「心がないから」という言葉の意味って……。
考えていることが全て顔に出ていたかのように、碧がこくりと頷いた。
「そうだよ。AIは人工的に作られたんだ。そんなにが、俺たちに……。心があるなんてことないだろ?」
「……」
何も言えない。言葉が出ない。
「こんな現実を知っても、俺たちは心があると思う?」
あまりにもまっすぐな問いに、私は何も言えなかった。
だって、AIに、心なんて……ないと、思ってしまったから……。
暫し気まずい沈黙が流れて、私は気まずさを断ち切るように問いかけた。
「じゃあ……、私たちも捕まって、いつか閉じ込められちゃうってこと?」
「……うん、いつかね」
「そっか……」
前までAIを恐れていた側だったと言うのに、恐れられる側だったとは……。
いつかと碧は言っていたけれど、あまり遠くない未来に、私たちは捕まる。そんなことをわかっておきながら生きていくのは、辛い。
人だっていつか死ぬけれど、生きていく時間があまりないということを目の前に突きつけられると、やっぱりどうしようもなく辛くなってしまった。
もう、大切な人と……、碧と、会えなくなってしまうのか。
そう思った瞬間に、私の瞳からは一粒の涙が溢れた。
碧に会えなくなるなんて、想像するだけで辛かった。
私たちは愚かなのかもしれない。
明日は、君と会える明日は、自由に生きられる明日は……、当たり前のようにやってくる物だと思っていた。
現実は、私たちの予想を上回るほど、残酷だということを、忘れていたのだ。



