心にいつも、君がいる



今日の空は、壮大な青空を雲が覆い尽くしている。

確か今日は、両親揃って仕事だ。帰っても、誰もいないだろう。

「水瀬」
「はいっ⁉︎⁉︎」

急に耳元で聞こえた声にびくうっと肩を跳ね上げた。

バクバクバクバクと鳴る心臓を押さえながら、振り向くと、清水さんがいた。

…え?清水さん⁉︎

清水さんの声を初めて聞いた。
透き通った、綺麗な美声。

…というか、私清水さんに話しかけられてる⁉︎なんで⁉︎

「今度、文化祭だから、部活来て。準備する」

あっ、そういうことか。
文化祭で、美術部として絵を飾るのだろう。私と清水さんは、2人とも美術部員なのだ。

「あ、はいっ」

慌てて、背中を向けて教室を出ていく清水さんを追いかけた。

すぐ清水さんに追いつき、隣に並ぶ。

「ぶ、文化祭、どんな絵かくの…?」


「…部長と相談する」

絵のテーマを決めるんだろうか。美術部は、私、副部長の清水さん、もう1人の部長のみで構成されている。きっと私たちが卒業する時にはもう、この美術部は廃部になるだろう。
この三人もほとんど幽霊部員で、こういう行事で飾る絵を描くとき以外集まらない。極めてゆるい部活である。
そういえば、部活動見学の時は、もっと人が多かった。少なくともこの3倍はいただろう。なのに、私と清水くんを見た瞬間にすぐに見学にも来なくなった。
部長は、他クラスの人。私と話してくれる数少ない人で、フレンドリーで明るく、積極的。なのに、クラスを見にいったら私たちと同じく空気同然のように扱われている。

「…私ね、学校の先生が嫌いなんだ」
気付いたら、そんなことを口走っていた。
なんでだろう。清水さんになら話してもいいと思ったのかもしれない。


「へえ、なんで?」

「うーん…、本当に大したことないんだけど…一回学校で揉めたことがあって。濡れ衣着せられて、私の言い分を聞かずに私を悪者だって決めつけてきて。それに、自分の指示したことを聞かない人に怒るし。自分の言う通りに動いて欲しいだけなのかな、って」

言ってみたら、ものすごく幼稚に思えた。
よく考えたら学習のために指示してるし、決めつけてきたのは事実だけど、全員がそうってわけじゃないのに。

「ご、ごめん忘れて…」
「一緒だ」

「…え?」


「俺も人間嫌いなんだよ」

淡々と言われた言葉に、言葉を失った。

じゃあ、私のことも嫌いなのだろうか。

というか、彼が人間嫌いなんて初めて知った。教室でも話さないし、彼のことなんて全く知らないから。