君への想いは、愛だった



「何言ってんの?」

後ろから、聞いたこともないくらい低い声が聞こえて、慌てて振り向いた。
あ……。

後ろには、たった今登校してきた様子の碧が立っていた。
そして、見たこともない形相で話をしていた人を睨みつけている。
そっか、碧って人間嫌いだったっけ。……いや、誰だって友達の悪口を言われたら不快に思うだろう。

「し……、清水さん……」

怯えた様子で碧の苗字をいった女の子。碧に話しかける人なんて初めて見たくらいかもしれない。だから、彼の苗字を他の人が言うのは、久しぶりに聞いた。なんだか新鮮だった。

「もう一回言え。陽人がなんだって?」
「い、いえ……なんでもないです。す、すみませんでした……」

そそくさと逃げるように席へと座って行った。
碧はそんな人たちにため息をついて、教室へと向かう。

「あ、碧っ!」

不機嫌に歩いて行く碧の元へ走って行く。

「……だ、大丈夫?友達のことあんなふうに言われて、嫌だよね……」
「大丈夫。ムカついただけ」
「そ、そっか」

……何もいえない。私は親友とかできたことがないから、失って会えなくなった悲しみをわかってあげることはできない。慰めの言葉も、気の利いた言葉すら出てこない私のことも……嫌いになってもいいのに……、なんで「水瀬はいい」って言ってくれたんだろうか。
私は……、そんなこと言ってもらえる人間じゃないのに…。

君のことが知りたいのに、私は全く君のことはを知ってあげることができていない。

そんな自分が、本当に嫌だった。


◼︎ ◼︎ ◼︎◼︎


「千瀬、ちょっといい?」
「え、どうしたの?」

碧からお呼び出しを受けて放課後教室に残った私。

「一緒に帰ろう」
「……え?」
「千瀬って帰りってどっち方面?」
「え……、あっちの、ショッピングモールがある方……」
「ああ、あそこか。じゃあ一緒だ。よし、帰ろう」
「う、うん……」

鞄を持ち直して、碧の隣に並ぶ。
誰かと一緒に帰るなんて初めてのことだから……、何を話せばいいのかもわからない。
コミュ力のない私は、たいした会話の内容も絞り出すことができない。

ち、沈黙が、痛い……。
何も喋らない碧と、頑張って会話を絞り出そうとしている私で、沈黙がずっと続いている状態がずっと続いている。

「あ、ここのクレープ美味いんだよな」
「え、そ、そうなのっ⁉︎行った事ないんだよね……」
「行こう」
「えっ、ちょっと待って!」

私の手を引っ張って行く碧について行く。

「すみません、フルーツクレープ二つ」
「はーい、今お作りしますねー」
「え、ちょ、ちょっと待って……‼︎」

さらっとお金を渡してしまった碧。

「お、お金は払うから!!」
「いや、いい。いらない。高校からの下校中の寄り道とか憧れでしょ、叶えたい。だから遠慮しなくていい」