「おはよー」
挨拶が交わされる教室内で、私はいつも空気同然の状態だ。
透明人間になったと言っても過言ではない。
それぐらい、みんなは私のことを視界に入れない。入れたとしても、人だと認識していないだろう。
理由はわからない。でも私は生まれつきこうだった。
家族からは愛情を受けて育ってきた方だと思う。でも、いつまで経っても友達はできなかった。
クラスに飾ってあった花瓶を誤ってクラスメイトの女子が落とし、割ってしまった時、女子は問い詰められた時、私にわかりやすい濡れ衣を着せた。
花瓶に入っていた水で濡れた服を着て、証拠隠滅しようとして花瓶の欠片で切った血が滲む手で、迷わず私を指さした。
『水瀬さんが、割った』
私はその指先を、ぽかんと見た。
どうして罪を擦りつけるのが私?なんで?
どれだけ「違う」と否定しても、証拠を突きつけても、みんな私を悪者にした。
どうして?なんで?
なんで私の話を聞いてくれないの?
女子が私に濡れ衣を着せた後、しばし沈黙が流れた。
沈黙を破ったのは先生だった。信じられない言葉を口にした。
『それは良くないね』
まだ私は弁明も、一言もいっていないのに、そうだと決めつけた。
両方の言い分も聞かぬまま、一方的に決めつけ、私を悪者扱いにしたのだ。
私はまだ許していない。
結局教師は、自分が給料を貰えれば、子供をぞんざいに扱っても良いと思っているんだろう。
私は、教師が嫌いだ。
それからも、理由のわからない嫌がらせをされることが何度もあった。
でも、そういう時いつも、両親からもらった、独特な形のペンダントを手で握れば、元気が湧いてくる。
私はまだ頑張れる、生きていけると思うのだ。
がらりと教室の扉が開いた。その顔を見た瞬間、別のクラスメイトがすぐに視線を逸らした。
綺麗な、透き通った黒色の瞳が、長い前髪の間からちらりと見えた。
はっと息を呑むほど綺麗な、清水碧。
普通だったら、きゃーきゃー叫ばれてモテるはずの彼だが、なぜか私と同じように空気扱いされている。
目があわないように、視線を向けているところを誰かに見られないように。関わらないように。クラスメイトから、私たちへのそんな気落ちが読み取れる。
どうして私たちなんだろうか。
座ろうとする清水さんの首元で、チェーンがきらりと光った。
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