「紫乃様、このままでは、お身体に障ります。どうか、少しでもお召し上がりください」
目の前に二人分の食事が用意されていて、紫乃は呆然と眺めていると、心配したタミが横から声をかけてきたのだ。
勇心がいつ帰ってきてもいいように、食事の用意はしてあるのだが、一向に連絡がないまま。
(これが、……あと何日続くのかしら……?)
「せっかく健康的になっていらしたのに……」
タミの声が居室に沈んでいく。目を伏せた紫乃の目から大粒の涙が零れ落ち、眼鏡のレンズがわずかに曇る。
(そうよ。こんなにも顔色の悪い妻なんて、嫌われてしまうわ。彼が帰ってきた時に、笑顔で出迎えるためにもしっかりしなくちゃ……)
「ご飯をよそってくださる?」
「紫乃様っ」
「心配かけてごめんなさい。けど、もう大丈夫よ」
紫乃は涙を拭い、自分に言い聞かせる。
(夫が不在の今、女主人である自分がしっかりしなくちゃ!)



