勇心から連絡が途絶えて、早三日。
紫乃はいてもたってもいられず、家事を早々に終わらせ、タミを連れて軍病院を訪れた。
すると、顔なじみの看護婦が紫乃の顔を見て、気まずそうに視線を逸らした。
覚悟はしてきたつもりだ。執事に、軍病院へ問い合わせしてもらったが、結局欲しい答えは得られなかったのだから。
紫乃は、いつものように受付の事務員に手づくり菓子の差し入れを手渡すと、別の事務員が受付を飛び出していった。それを横目に見ながら、紫乃は口を開く。
「何かお手伝いできることはありますか?」
「特に……これといって……」
「そうですか。では、いつものように、お洗濯やお掃除を中心にいたしますね」
紫乃は持参した白い割烹着に袖を通すと、事務員はばつが悪そうに視線を泳がせた。タミも割烹着姿に着替え、洗濯場へと向かう。
石鹸の匂いがかすかに漂う中、紫乃はたらいに溜まった白布を手に取り、水にそっと浸した。湿気を帯びた空気が肌にまとわりつき、額にうっすらと汗がにじむ。
ふいに脳裏をよぎるのは、実家での水仕事の記憶。
雪が舞うような寒い日でも、洗濯や水拭きなどの雑用を毎日こなしていた。あの頃の手は、いつもあかぎれだらけだった。けれど今は、すっかりよくなっている。
夫である勇心が調合してくれた軟膏を毎晩欠かさず塗っているおかげで、水に触れても、もう痛むことはなくなった。
紫乃とタミが洗濯を始めると、「篁夫人」と呼ぶ、男性の声が耳に届いた。
紫乃が声のする方に目を向けると、勇心の後輩である三宅医師が軽く会釈し、辺りに人がいないことを確認して、近づいてきた。



