冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~


 食卓に並べられた料理は、すっかり冷めてしまった。
 紫乃は自分の席に正座したまま、微動だにせず勇心の席を見つめていた。

 ――ボーン、ボーン。
 柱時計がまるで何かを告げるように、重々しく鳴り響いた。
 紫乃はハッとし、時計に目をやると、時計の針は夜の八時を指していた。

(十九時に帰ると仰っていたのに……。きっと、急患でお忙しいのよ……)

 そう自分に言い聞かせながらも、胸の奥にじわりと広がる不安を、どうしても拭いきれない紫乃。再び静まり返った部屋の空気が、時間と共に冷たくなっていく。

 その夜、日付が変わっても、勇心は帰らなかった。
 電話のベルが鳴ることもなく、夜は容赦なく更けていった。