はしたない態度を取ってしまった後悔と、出勤する夫を引き留めてまで煩わせてしまったことへの罪悪感が押し寄せる。
すると、ぎゅっと握りしめている紫乃の手に勇心の大きな手が重なり、指先が絡めとられる。
「血行、良好」
「っ……」
一歩間を詰めた勇心は、眼鏡の縁にかかる前髪を横に流した。
「視界、確保」
「っっ……」
紫乃の頬がみるみるうちに紅潮していく。
自然と絡み合う視線。お互いの瞳に、愛おしい伴侶の姿が映る。
わずかに視線を揺らした紫乃の腰に手を回し、勇心はそっと抱き寄せた。
「転倒、防止」
「っっっ……!」
紫乃の顎に指を添えて、桜色の唇に口づけを落とす。
「熱もなさそうだ」
「……もうっ!」
悪戯っぽく笑った勇心は、紫乃の頭をぽんと一撫でした。
「では、今度こそ、行ってくる」
「はい、いってらっしゃいませ」
顔を赤らめながら見送る紫乃の姿に、勇心は心があたたかく満ちていくのを感じていた。
蜜月の二人は、日に日に夫婦らしくなってきている。
夫を見送った後、紫乃はそっと唇に触れる。
(勇心様に触れられると、どうしてこうも切ないのかしら……。今お見送りしたばかりなのに、もう会いたくてしかたないわ……)



