お弁当を届けてから数日が経ったある日の、昼少し前。軍病院の中庭には、まだ芝桜が咲き誇っていた。
紫乃は手にした包みを大事に抱え直す。中には朝早くからこしらえたおにぎりと、茶菓子が入っている。
あれから、軍病院へは、毎日のように差し入れを手にして通っていた。
「こんにちは」
通い慣れた廊下を歩きながら、顔なじみの看護婦や事務員に挨拶を交わす。
最初はよそよそしかった彼らも、今では紫乃に笑顔を向けてくれるようになっていた。
「奥様、今日も差し入れを……?」
「ええ。皆さん、お忙しいでしょうから」
「本当にいつも助かります」
そんなやりとりをしていると、正面入り口から慌ただしい足音が響いてきた。
父親が幼い男の子を抱きかかえて、血相変えて駆け込んできたのだ。
「すみませんっ!! この子をどうか……診てもらえないでしょうか」
男の子はぐったりとしていて、顔は青白く、額には脂汗が滲んでいる。紫乃は思わず怖くなって後退りをしてしまった。
「先生っ!! 急患です!」



