冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~


「軍病院の庭は、患者様の療養のために、季節の花が絶えないよう手入れされているそうですよ」
「そうなのね……」

 芝桜の向こうには、赤や白の躑躅が咲き誇っていた。その鮮やかさに、紫乃の頬も自然と綻ぶ。

「こんにちは」

 車椅子に乗っている若い兵士に、紫乃は声をかけた。

「お加減はいかがですか?」
「はい、だいぶ良くなりました。篁先生のおかげです」

 患者の言葉に胸が震えた。
 患者を救う夫を支えることができるということに、紫乃は自分が誇らしく思えた。

「何かあったのかしら……?」

 担架に乗せられた兵士が、病院の中に運び込まれていく。

「……急患かしら?」
「そのようですね」

 タミが小声で答える。

「では……お邪魔にならないように、私たちは帰りましょう」
「……はい」

 紫乃は車いすの男性に会釈し、庭を後にする。視界に広がる芝桜が、何となく切なく感じられた。