冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~


 夜盲症の紫乃の目では、廊下に転がり落ちたおにぎりがどこにあるのか、わからない。手探りでおにぎりを探していると……。

「握り飯は拾ったから」
「っ……、お手を煩わせてしまい、申し訳ありません!」

 頭上からかけられた気遣いの言葉に頭を下げようとすると、手にしていた皿がすっと取り上げられてしまった。

「そんなに何度も謝らなくていい。それと、ここで話していると、使用人たちが何かあったのか?と心配して来てしまうから、とりあえず、中に入って」

「……はい、失礼いたします」

 部屋の中に招き入れてもらった紫乃は、埃っぽい本の匂いを感じた。

(研究熱心だとタミさんから聞いていたけど、かなり古書も多そうだわ)

 明かりを頼りに室内を見回すと、急に黒い影が目の前を覆った。そして、大きな手に紫乃の指先が掬い上げられる。

「皮膚の表皮が裂けている。炎症反応が進行すれば、二次感染の恐れがある。早急に処置が必要だ」
「……はい?」

 突然の言葉に紫乃は固まってしまった。すると、紫乃の手に、小さな器が握らされた。