夜も更け、屋敷の灯が次々と落とされていく中、紫乃はタミに気になっていることを尋ねた。
「タミさん、勇心様はいつも何時頃にお休みになるの?」
「そうですね……。日が変わる頃になることも、しばしばございますよ」
「まぁ、そんなにも遅くに……?」
紫乃は思わず眉をひそめた。
(あれほど大柄な体で、夕餉だけで足りるのだろうか?)
ふと、すき焼きの支度を思い出す。割り下の香りを思い出すだけで、また何か作って差し上げたくなるのだ。
「若旦那様のお夜食に、おにぎりを作られるのはいかがでしょう?」
「名案だわ!」
「では、白米を炊いてまいりますね」
「ありがとうございます」
「紫乃様、目下の者には敬語は使わないでくださいませね」
「っ……、気をつけるわ」
タミは苦笑しながら、厨房へと向かっていった。
*
炊きたての白米の湯気が、夜の厨房にふわっと立ちのぼる。
紫乃はタミが炊いてくれた米を手に取り、握っていく。梅干し、塩昆布、高菜の漬物……具材はささやかだが、心を込めて包み込んだ。
(……勇心様、召し上がってくださるかしら)



