女中は野菜かごの中から長ねぎを一本取り出す。
「白い部分を炙ってから刻んで入れると、香りが立って、味に奥行きが出ますよ」
「まぁ! 若奥様、お料理がお好きなのですか?」
「ご実家で、ずっと家事をなさっていたそうですよ」
「えっ?!」
タミが口添えすると、女中たちの手が止まった。
紫乃の言葉通りにノブが、ねぎの白い部分を炙ってから刻み、味噌汁に加え、一口掬って口に含む。その瞬間、声にならない息が漏れ出した。
「……とても美味しゅうございます!」
「はぁ、よかった」
紫乃がほっと胸を撫で下ろすと、他の女中たちが「私も!」と味見をし出した。
「若奥様、他のお料理も味見してもらえますか?」
「えぇ、喜んで」
(……私にも、できることがあるかもしれない)
紫乃は嫌悪されることも覚悟のうえで声をかけたが、意外にも篁家の人々は、純粋に仕事をしている人ばかりだった。



