冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~


(この方が……)

 紫乃は両手を重ね、丁寧にお辞儀をしようとした、その時。

「動くな」
「っ……!?」

 勇心は思わず肩手を上げ、紫乃の動きを封じた。勇心の低くて冷たい声音に、紫乃は胸がきゅっと縮んだ。

 白軍服に身を包み、百ハ十五センチの長身に鍛え抜かれた体躯。肩章が光を受けて淡く輝き、無駄のない姿勢は、軍人としての風格そのもの。だが、その鋭い眼差しは、紫乃を見た瞬間、わずかに揺れた。

(……西洋の人形か?)

 話に聞いていた『目が不自由な令嬢』という言葉では言い表せないほど、視線を奪われてしまう。
 白い肌は薄氷のように繊細で、細い肩は抱けば折れてしまいそうに華奢。伏せられた睫毛は長く、影を落とす。
 そして、震える声は鈴の音のように、かすかに揺れていた。

 勇心の心臓が、どくんと強く脈打つ。

(こんな子供か、小動物かわからないような者を嫁にしろというのか……?)