ある日の朝。
『おっ、おはよう! やっと起きたか!』
「おはよ──って、アンタ誰っっ!?」
起きたら部屋の中に、キラキラのイケメン男子が浮いていた!
『オレか? ユナの守護霊の護だ! 最近のお前、見てらんないからな。だから、こうしてオレ様が来てやった!』
(自称)守護霊がドヤ顔で答えた。
バクバクだった心臓が、『見てらんない』のひと言でスーッと冷えた。
だって、それは私の今の状況とか、全部知られてるってことで。
「あっそ、別に好きにすれば」
バツが悪くて、どんな顔をすればいいかわからなくて。
あえて素っ気なく答えた。
『ツレねえなぁ~。ま、いいわ! 好きにしろって今の台詞、忘れんなよ!?』
護は私の態度に気を悪くした様子もなく、そう言ってニッカと笑った。
護のさっぱりした態度が、ここ最近の学校生活で消耗した心に、ひどく心地よかった。
護のことを家族になんて説明しようって思ったけど、私以外には見えないらしい。
なんなら、ちょっとドキッとしちゃうイケボも聞こえないそうで、ひと安心だ。
「護ってさ、ずっといるの?」
学校に向かう道すがら、護ととりとめのない話をする。
私はクラスの女子にハブられてて。
だから、こんなに誰かと話をしたのは久しぶり。
正直、心が躍った。
『いや、ユナの日常が戻ったら帰るぞ』
……そっか。帰っちゃうのか。
楽しい心に、一瞬、スッと影がかかる。
「ねぇ。ところで額のソレって、オシャレのつもり?」
頭に巻かれた三角の布を指さして問う。
『天冠のことか? コレがないと霊界に帰れなくなるから、こうして肌身離さず持ってんの』
「へー、大事なものなんだ」
声にしながら、ほんのわずかに脈が乱れた。
そうして辿り着いた教室。
私の机にのった花瓶と、黒板一杯に書かれた悪口を目にし、護がブチキレた。
『イキがってんじゃねえぞ! クソガキどもが!』
ブワッと竜巻が起こり、特定の生徒をもみくちゃにする。
鬼の形相で制裁を加えていく護と、泣きべそで逃げていく女子グループを見ながら、私の心にひと筋の光が差した。
そんな出来事を幾度か繰り返し、私へのイジリや、ハブりは完全になくなった。
ある日。
『なぁ? オレの天冠知らね?』
「さぁ」
『おっかしいなぁ』
天冠を探す護を横目に、父さんの灰皿に不自然にのった灰の山をそっとゴミ箱に捨てる。
ふふっ。これでずっと一緒だね。



