きみが春なら

世界に一人きりみたいな静けさの中。立ったまま見下ろした街の灯りが、目に染みる。
 

『良かった。また会えた』
『大丈夫。あなたがいるから』
『ただ優しくて、とてもあたたかい人よ。』
  

胸を巡るのは君に貰った言葉ばかりだ。

「……」

このベンチで近付いた彼女との距離は、
このベンチで他人以上に遠ざかる。

例えば違う場所で出会っていたら。
俺が詐欺師じゃなかったら、
君が教会暮らしじゃなかったら、
許されたのか?


「泣かせたな。最後に」


独り言が夜風にのって消える。
泣く資格すら持ち合わせていないのに。今夜はこの場から動けそうもなかった。