きみが春なら

彼女の表情は変わらない。そう言われるのをわかっていたみたいに。

「街で会っても声をかけちゃダメだ。俺もそうする」
「……」
「いいよな?」

彼女が頷いた気がしたが、気のせいかもしれなかった。
ベンチを挟み見つめ合ったまま、どれくらい時間が経ったのだろう。こちらに歩いてきたハルはマフラーを外し俺に差し出した。

「送っていくよ」
「大丈夫」  

掠れ、震えた声だった。

「一人で帰れる……っ」
「おい!」

駆け出した背中は夕闇に溶けてすぐに見えなくなった。