きみが春なら

ハルは明らかに傷ついた顔をしていた。
瞳から、涙がひとつだけ落ちる。

「どうして泣くんだよ」
「わから、な……」

零れる涙が後から後から頬を伝う。

「あなたといると……ダメなの。心が乱れてばっかりで、苦しいの」

しゃくりあげた彼女は、俺のマフラーに顔を埋めた。


……なぁ。神様
今だけでいいから、
見ないふりしてくれないか。

そうしたら 今すぐ彼女を抱き寄せて
小さな手を引いて

このまま 二人で
このまま、


「俺も同じだよ」

濡れた瞳で見つめられ、胸が軋む。

「自分じゃないみたいだ。……おかしいよな」

彼女に抱く特別な感情の正体を、本当は知っていた。
向けられた想いに気が付かないほど子供でも鈍感でもなかった。

「ハル」

それでも。


「もうここには来るな。」