きみが春なら

アーサーからの報酬は予想以上だった。
計画に加担した仲間達は初めて手にする額に狂喜乱舞し、早速連れ立って夜の街に繰り出した。
何も言わずに輪を抜け、一人で山道を上る。夜の山は冷え込みがきつくさっきから雪もちらついている。クリアに澄んだ空気のせいで、思考が延々とまわり続けた。

あの時。馬が銃殺されなければ、俺の目の前で彼女は死んだかもしれない。
そうなったら俺は。
俺は、どうしてたんだろう。

山頂に到着すると、いつものベンチに誰かの背中が見えた。
……いや、この場所を知っているのは一人だけだ。

しんしんと降る雪の中。微動だにせず夜景を眺めている。

一歩近付く度に、靴の下で枯れ葉が音を鳴らした。
彼女がゆっくりと振り返る。目が合ったところで足を止めた。

「……ここに来たら、あなたに会えるような気がして」

立ち上がった君はそう言った。真っ赤な両手と鼻の頭が朧月に照らされる。 

「危ないだろ。こんな夜中に一人で」

驚きと呆れと。ほんの一匙、でも確かな嬉しさも。
ごちゃ混ぜの感情を持て余しながら足を進める。