きみが春なら

「どけろ、ハル!!」


気が付いたら、物陰から飛び出しそう叫んでいた。
なおも婆さんを背中に庇った彼女が一瞬こちらを見る。加速した馬が、彼女の姿を遮った。

── ダメだ
間に合わない、


「……っ!」
 

思わず目を逸らした時だった。

辺りに一発の銃声が轟き、動きを止めた馬がゆっくりと地面に倒れ込んだ。制服を着た警察官が銃を構えている。銃口からは煙が上っていた。
射殺された馬の向こう側で彼女がへたり込んでいる。

「……」

俺たち二人だけ時間が止まったかのようだった。警察官が駆け寄り何か声をかけているが、ハルは力の無い瞳でただこちらを見る。俺も目線を外せなかった。

「イーヴァン!警察に見られたらまずい。戻ろう!」

慌てたダニーに腕を引っ張られ、ようやくその場から離れた。