きみが春なら

「な……」

何でここに、と思ったが答えは簡単だった。
今日はたまたま銀行と同じ通りに出店していたのだろう。悪夢のような偶然だった。

「この!大人しく……っ」

仲間の一人がなおも諫めようと手綱を握っているが、馬は全くいう事をきかない。仲間の顔にも焦りが見える。

石でも投げて馬の気を引こうか考えているうちに、ハルが突然店の外に走り出てきた。驚いてそちらに目をやると太った老婆が店の前に座り込んでいる。彼女は立ち上がらせようとするが、婆さんは短く悲鳴を上げ首を振る。足でも挫いているのかもしれない。
ハルは馬の様子を見ながら必死に肩に担ごうとしている。が、あの体型の人間を彼女が支えられるはずもない。膝をついた状態からどうしても立ち上がる事が出来ない。 

「バカ、早く逃げ……」
「うわあっ!」

どよめきにハッとし振り返ると、仲間が馬から振り落とされる瞬間だった。


自由になった馬はますます興奮し、
彼女に向かって一気に突っ込んでいった。