きみが春なら

── 助からないかもしれない。
頭の隅で覚悟は出来たつもりだった。

しかし気を抜くと笑顔が蘇り、声を思い出す度に城に飛んで帰りたくなった。
息を引き取ったという知らせが届く夢をみて、夜中に何度も目を覚ました。

『人の命を奪うのですか』
『何の為に?』

戦場の真ん中で。問われた意味を考え続けた。

……失うかもしれない。
だから何だ?と。過去の俺なら言うだろう。

「……」

本当にギリギリのところで命を繋いだ妻の寝顔を見下ろす。

── 妃なんて誰でもいい、と思っていたのに。
顔が好みだから。異人で珍しいから。
それだけだった筈なのに。
この女を知れば知るほど、自分が自分じゃなくなっていく。
 
「……そうか」

そうか。

これが、
そうか。

思わず苦笑してしまう。ハルの手をとり口づける。


こんな気持ちを
知る人生になるとは思わなかった。