きみが春なら

「朝帰りとは珍しい。忙しかったのか?」

すっかり陽も登りきった頃、体を引きずって家へ帰った。コーヒーを飲んでいるダニーの目の前に無言で札束を放る。

「どうしたんだ、この金!?」

素っ頓狂な声が部屋中に響いた。なおも無言を貫き、ダニーを見返す。

「こ……んの、色男!」

全てを悟ったらしいダニーが、満面の笑みで俺を指さした。

「寝る。」

それだけ返し、寝室へ引っ込んだ。


ドアを閉め、腕時計を外して香水臭いシャツを脱ぐ。

「1500ドルもあるぞ、おい!!」

はしゃいだ様子のダニーがそう声をかけてくるが、返事もできないほど疲れきっていた。 

「……」

ぽつ、と雨が降るように。
自然にハルの事を考える。

夜景に照らされた横顔。俺に無理矢理パンを食べさせ『美味しい?』と笑った声。
一晩中思い出さないようにしていた彼女の姿が次から次へと浮かんでくる。


『あの子のカラダ。一晩幾らくらい稼げるんだろうな?』


「……くそったれ、」
右手に持っていたシャツを、ベッドに叩きつけた。