きみが春なら

「ハル、」
転がるように駆け寄った。

「ハル。しっかりしろ」

── 痩せた、とまず思った。
元々華奢だったが、首筋の細さに愕然とした。

「俺だよ。わかるか?」

声をかけても反応はない。目を瞑る君は人形のようだ。
熱が高いと聞いていたが、顔は青白かった。
点滴が刺され、ぱんぱんに浮腫んだ手。握ると、指の跡が残った。

「ハル」

ハル。
ハル。

半年間焦がれ続けた君の名を。
こんな形で再び呼ぶなんて思わなかった。


どれくらいそうしていただろう。
君の唇が少しだけ動いた気がした。

「っ、」
体を抱き起こし、口元に耳を寄せる。

「ゆめ」
「みて……」

途切れ途切れの、掠れた声を。
聞いた瞬間、周りの景色がぼやけていく。

「……どんな?」

返事はしばらく返ってこなかった。浅い呼吸が時々聞こえる。

「あなたと」
「マーケット、で……」

無理だった。泣かずにいるのなんて無理だった。君は続きを話せなかった。

「夕飯の材料を、買って。手を繋いで桜を見に行く夢か?」

そっと指を絡める。いつもそうしていたように。

「俺も、みるよ……その夢。よくみる」

繋がってる、と思った。まだ俺たちは繋がってる、と思った。
君の体を抱きしめ、歯を食いしばって泣いた。