きみが春なら

しんとした部屋に二人きり。ベッド横の椅子に座って、君を見つめる。
苦しいはずなのにその表情は穏やかだ。

「疲れてるもんな。眠たいよな」
「……だけど、そろそろ起きてくれないか。皆待ってる」

点滴の滴がひとつ、またひとつと落ちる。
『あなたがここにいてくれて嬉しい』。
内緒話みたいにそう言ってくれた夜を思い出す。

「な?頼む」

あまりに頼りない呼吸音。
不安で不安で涙が出そうだ。

「頼むよ……」 


『俺の女だ』。
王子の言葉が胸に突き刺さる。
ハルに対する感情の変化は明らかだった。

でも、彼も見たはずだ。
意識のないハルがどんな顔をして、あいつの名を呼んだか。
今際の際まで想っているのは誰なのか。
思い知ったはずだ。
俺と同じように。

「……」

── 夢の中の方が幸せなのかな。
だから
戻ってきたくないのかな。


どうしたらいい。

俺に、何ができる?