きみが春なら

医者と看護師が出て行った後。
部屋には俺たち三人だけが残された。

「俺の……せいか」

力無く呟いたロレンツォ王子が椅子に崩れ落ちる。こんな姿を目にするのは初めてだ。
横を抜けベッドの側へ行き、何日も変わらないハルの寝顔を見下ろした。

本人の生命力を信じるしかない、と医者は言った。
それは即ち
彼女が今まさに、命の危機に瀕しているという事だ。

つい伸ばした指先が震える。
心の中で。何度も君の名を呼んだ。

「……ん……」

その頬に手を当てると、突然彼女が小さく身じろいだ。
「あ、」
俺と目が合った瞬間、王子もこちらへ駆け寄ってきた。
ハルは顔を歪め荒い呼吸を繰り返す。

「苦しいのか?」

慌てて声をかけた時。

「……よかった」

目を瞑ったまま、消えそうな声でそう言って。
君は頬にある俺の手に触れた。

「イーヴァ……」


うっすら笑みさえ浮かべながら俺の手に縋りつく君は、途切れ途切れにあいつの名を呼ぶ。

でも、それも一瞬だった。すっ、と表情が消え失せたかと思うとまた眠りに落ちてしまう。

思わず視線を送ると、王子は感情の読みとれない瞳でハルを見つめていた。