きみが春なら

◇ ◇ ◇ ◇

翌日。少し早目に出勤すると、王子はもう戦へ発っていた。
廊下を歩いている途中でトレーに食事を乗せたジュリに出くわす。

「ハルの部屋へ届けるのか?あ、いや。ハル様の」
「はい」
「ちょうどいい、俺も様子を見に行くよ」

二人で歩き出してすぐに、ふふっとジュリが笑い声を漏らした。

「ハル様がいらしてから。マナトさん、何だか親しみやすくなりました」
「……え」
「ロレンツォ王子も明らかに優しい顔つきになられましたし。皆びっくりしてます」

不思議ですね、と意味ありげな視線を寄越すジュリ。どう反応すればいいのかわからない。
彼女は周りを見渡し人影が無いのを確認した後、声をひそめて話を続けた。

「でも、私思うんです。ロレンツォ王子よりマナトさんの方が、ハル様とお似合いなのになって」
「な、」

かっと顔に熱が集まる。
ベッドの中で目を瞑る昨夜の彼女を、慌てて頭から追い出した。 

「……やめろ」
「だってマナトさんといる時の方が、力が抜けてて楽しそう。マナトさんの事信頼してるのがよくわかります」
「立場の違いだよ、ただの。王子の前ではまだ緊張してるだけだ」

殻に閉じこもっていた君が、だんだん笑ってくれるのが嬉しかった。少しずつ自分の事を話してくれるのが嬉しかった。
だけど。

「── 何を言ったって。既に王子のお妃だ」