きみが春なら

「……どういう意味だ」
「そのままの意味よ。今夜一晩。どう?」 

派手な雰囲気の美人だが、割と年は食っていそうだ。年齢を隠すためなのか信じられないほど化粧が濃い。

「バカバカしい。そういう商売じゃないんだよ」
「いいじゃない。若くて良い男と遊びたい気分なの」
「旦那と来てるんじゃないのか」

さっきまで彼女と連れだって歩いていた、小太りの中年男をちらっと見る。顎髭を触りながら他の店の店員と談笑していた。

「あれを潰すのは簡単よ。強い酒を飲ませればすぐに寝ちゃうの」
「……」
「お金が欲しいんでしょう?こーんなイミテーションで儲けようとするくらいだもの」

女が店頭に並んだ商品を摘み、せせら笑う。左腕は完全に捕まっていた。  

「1200ドル出すから。ね?」

頭の中で誰かの声がする気がするが、靄がかかったみたいにハッキリしない。
何も深く考えたくない。何も。

「……いいよ。」